投手から見た野球〈失点と自責点〉 | 女の子のための『野球、ルール以前のモンダイ』

投手から見た野球〈失点と自責点〉

前回、勝利投手と敗戦投手について説明しました。今回は投手には欠かせない〈失点と自責点〉について説明します。

失点とは…
失点とは文字通り、点を失うことです。つまり、相手チームに得点を許すことです。2005年3月27日、ロッテ対楽天の試合は記録づくめの試合でした。中でもそのスコアは新聞でも大きく取り上げられました。ロッテ26-0楽天。この26得点というのは1950年5月31日、当時毎日オリオンズだった現在のロッテが東急戦で23得点をあげた記録を55年ぶりに更新するというものでした。これを逆にいうと楽天はチームで26失点したということになります。

では、投手に科せられる「失点」はどのように決められるのでしょうか。
例えば、あなたは先発投手だとしましょう。さあ、勝利投手の権利がつく責任投球回数の5回を投げ終わって0点のまま6回に突入です。あなたの調子の良いことから、ベンチは続投を決めました。ところが、気のゆるみからか制球が定まらず、ヒットと四球であれよあれよという間に無死満塁になってしまいました。ベンチが慌ただしく動いたかと思うと、あっさりとあなたは降板させられました。
あなたの後のマウンドを引き継いだ投手Aはなんとか二死まで持ちこたえたのですが、依然として塁は埋まっています。ここで相手チームの4番打者が登場です。力みすぎたAはこの打者になんと本塁打を打たれてしまいました。相手に一気に4点が加わります。
さて、あなたとAの失点は何点ずつになるのでしょう?
え? わたしにも失点がついちゃうの? と、思われたでしょう。はい、ついちゃいます。ここで言う「失点」とは、投手が許した走者が本塁に帰ってきて相手チームに入る得点という意味なのです。
そもそも満塁のピンチを作った責任はあなたにありますよね。Aはその走者を丸ごと背負わされた状態で登板するわけです。たとえ押し出しの四球を与えても、その走者さえいなければ得点にはならなかったはずです。そう考えるとAはかなり不利な条件で登板しなければなりません。そこで、走者を出した責任を負う意味で上のような考え方が採用されているのです。
つ・ま・り、この場合あなたの失点は3点、Aの失点は1点が正解です。

失点についてはよろしいですか? 
では、「自責点」についてもみてみましょう。

自責点? 自分に責任のある点?
あなたは先発投手です。5回、ここまで三振を奪うことで無失点で切り抜けてきたあなたですが、疲れが出始めたのか三振が減り始め、打たせて取る投球内容になってきました。そんなとき、遊撃手が簡単な打球の処理を誤って走者を許してしまいます。記録はエラーです。ドンマイ、ドンマイ。あなたは声をかけて投球を続けたのですが、運悪く次の打者に本塁打を打たれてしまいました。
この時点でのあなたの失点は2点です。が、納得できませんね。本塁打を打たれたのは投手であるあなたの責任だとしても、本来なら難なく取れる打球を上手く処理できなかった遊撃手のせいで許した走者の分まで責任をとるのはおかしいと思いますよね。
そこで、失点から投手の責任を問うのが不当である点数を引いた「自責点」を設けたのです。
ですから、上の場合、あなたは失点2点、自責点1点ということになります。

こんな場合はどうでしょう? ある打者が無死で2塁打を打ちました。次の打者のとき、捕手が上手く捕球できずに後ろに球を逸らしてしまったとします(後逸・パスボール)。その間、2塁走者が3塁まで進塁しました。さらに、打席にいた打者が犠飛を打って1点入ってしまいました。
2塁走者が3塁にいなければ、次の打者がフライを打っても得点にはならなかったはずです。そもそも2塁走者が3塁に進塁したのは、捕手のパスボールが原因ですよね。投手には責任がありません。エラーがなければ得点にはならなかったというわけです。ですからこの場合は失点1点、自責点なしになります。

このエラーですが、投手がエラーをすることもありますよね。ですが、そんな場合投手は他の野手と同じ扱いになり、自責点には数えられません。つまり、投手の責任は投球行為のみに課せられるというわけです。フィールディング(打球処理)は投手としての責任の範囲外になります。

ほかにも、二死からエラーで走者を出した場合、それ以降の失点は自責点にはなりません。例えば二死走者なしから次の打者をエラーで生かしてしまったとしましょう。さらに運悪く、その次の打者に本塁打を打たれて2失点しても、最初の走者をエラーで出してさえいなければその本塁打もなかったわけですから、自責点はなしになります。

防御率
自責点は「防御率」の計算に使われます。防御率とは、投手がその試合での自責点のペースで一試合分(9イニングス)投げ切ったとしたら何点失点するかを表した数字です。ですから、数字は小さいほど優秀な投手ということになりますね。

防御率=自責点×9÷投球回数

まず、自責点を単純に9倍します。その後実際に投げた回数で割るということです。ですから、同じ自責点でも投球回数が少ないほど防御率は高くなってしまうということです。そこで、一定の投球回数をシーズンを通して投げ切らないと公式記録として残さないことになっています。

規定投球回数=そのリーグの1シーズンの試合数

シーズン中、140試合が予定されている場合、規定投球回数は140回になります。140回といいますと、9イニングスを投げて約15試合分です。責任投球回数だけ投げるとしたら28試合分です。

ちなみに前年度最優秀防御率を取ったセ・パ両リーグの投手の成績は

セ・リーグ:上原浩治【巨人】2.60
パ・リーグ:松坂大輔【西武】2.90

です。2点台で最優秀ですから、各球団のエースクラスなら3~4点台というところでしょうか。
まあ、防御率は見ている者が各自で計算するわけではありませんので、新聞などで計算された数字を確認する程度でいいと思います。

※追記(2005年5月4日)
つかささまのご指摘に防御率の目安についてご指摘がありました。詳細はコメントをご覧ください。

〈先発投手〉
2点台=かなり優秀
3.20=エース級
3.40=中軸投手級
3.60=並
3.80=やや不戦力
4.00=登板させるのが怖い

〈抑え投手〉
1.00=優秀
2.00=良い
3.00=並
4.00=投げさせるのが怖い


というのが、つかささまのご意見で、たぶんこの見方が一般的なのだと思います。初めのわたしの説明ではおおざっぱすぎるのと、誤解を生じやすいということでここに追記させていただきます。
つかささまには再度御礼申し上げます。

また、お詳しい方にはご意見等お寄せいただけましたら、幸いです。