夏の夜 打ってなんぼの 野球かな | 女の子のための『野球、ルール以前のモンダイ』

夏の夜 打ってなんぼの 野球かな

突然ですが、野球は打たなければ得点できません。今回は『打撃から見た野球』です。え? タイトルが違う? スポーツ俳句さまの影響で五七五になっていますが、これは『打撃から見た野球』と読みます(ウソです)。

打球の方向

whereballgoes

野球中継を見ていて実況アナが「打球はサチューカンに飛んでいきました」とか「ウチューカンをぬけてフェンスまで転がっていった」とか言うことがありますね。打球の方向にはそれぞれを表現する言葉がありますので、ご紹介します。

・~塁間
例えば「1・2塁間」というと文字どおり1塁と2塁の間のことですが、この場合の「塁間」はベースそのものではなく、それぞれを守備する野手を指します。ですのでまったく同じところをコロコロと抜けていった球でも、それが1塁手と2塁手の間なら「1・2塁間」だし、2塁手と遊撃手の間だったら「二遊間」になります。「三遊間」は遊撃手と三塁手の間。

・左中間&右中間
文字どおり、「レフトとセンター」「ライトとセンター」の間という意味です。これも守備位置ではなく、野手同士の間ということになります。「~中間」ということは、ボールは外野手と外野手の間を抜けていったのですから、ヒットになる確率は高くなります。

・(外野)前
「センター前ヒット(文字メディアでは“中前打”)」だったら、中堅手の前でポトリと落ちるヒットのことです。内野手には使いません。内野手の前でポトリと落ちたら、内野ゴロか内野安打です。

・(外野)オーバー
打球が外野手の頭上を超えていくこと。レフトオーバーだったら左翼手の頭上を超えるヒットになります。

・ポテンヒット(テキサスヒット)
内野手と外野手が打球を追っていき、結局その中間に落ちてヒットになることを言います。

〈おまけ〉
・ピッチャー返し
打球が投手のいるところに飛んでいくこと。投手がこれをノーバウンドで捕球したら「ピッチャーライナー」、ゴロになった打球を1塁手に送球してアウトにしたら「ピッチャーゴロ」になります。これでヘタをしたら負傷することもあります。話は変わりますが、ピッチャーに折れたバットが当たることだってあります。但し、バットを捕ってもアウトにはできません。

たとえば、3塁線ギリギリのところでフライを捕球したのが2塁手だったら、そのフライは「セカンドフライ」になります。昨年の日本シリーズ最終戦9回表二死の場面、高々と打ち上げられた打球は西部ライオンズの守護神(抑えのエース)豊田投手のほぼ頭上に落ちてきました。が、いつの間にか1塁手のカブレラが近付いてきてそれを横から捕球したので、記録は「ファーストフライ」になりました。ウィニングボールを捕れなかった豊田はカブレラに文句を言ったとか、言わなかったとか。このように打球を「どこで」捕ったのか、ではなく、「誰が」捕ったのかが記録されるのです。

たとえ己は死なずとも・たとえ己は死のうとも
ヒットとはなんでしょう。自分のバッティングという行為によって誰ひとりアウトにならないこと、なのです。例えば走者1・2塁で内野ゴロを打ったとします。1塁走者が2塁で封殺されました。打者走者は無事1塁に到達しても、記録は「内野ゴロ」でヒットにはなりません。
また、二死以外のとき走者3塁で外野フライを打ちました。打者はこの時点でアウトですが、走者は「タッチアップ」が認められ、本塁に還って1点入ったとします。この場合、打者は「犠打(飛)1、打点1」が記録されます。

「タッチアップ」とは、打者の打った球がフライになった場合(野手にノーバウンドで捕球される球になった場合)、捕球と同時に塁を離れて次の塁に辿り着いたら、その進塁が認められるというルールです。もちろん、次の塁に辿り着く前にボールを持った野手にタッチされたらアウトになりますので、やみくもにタッチアップで走るということはありません。なにより、捕球が済むまでは塁を踏んでいないとタッチアップは認められません。もし、その前に飛び出していたりした場合は、いったん帰塁してスタートを切り直さなければならないので、打球の見きわめが重要になります。

ヒットエンドラン? ランエンドヒット?
あなたは1塁走者です。現在の打者のボールカウントが2-3(2ストライク3ボール)になりました。投手も打者も追い込まれた形です。実質次のボールで最後です。さあ、あなたならどうしますか?

1)打者がヒットを打つか、四球になるか見きわめる
2)ヒットになるにしろ、四球になるにしろ、とにかく走る

ふつうは2)の行動がとられます。打者が打ってもスタートダッシュが遅れたら、2塁封殺で1塁もアウトと「ダブルプレー(併殺)」になるかもしれません。ですが、たとえ内野ゴロになっても、1塁走者が好スタートを切っていれば、2塁封殺は免れるかもしれないのです。四球になってもそのまま2塁に走っていけばいいだけの話ですね。ボールカウントが2-3になったら、実況アナがよく「ランナーは自動的に走ります」と言うのはこのためです。

このように、打撃(ヒット)と走塁(ラン)を同時に行うことを「ヒットエンドラン」と言います。ベンチからこの「ヒットエンドラン」(エンドラン、とよく言いますね)のサインが出たら、打者はどんなボールでも打たなければなりませんし、走者はスタートを切らなければなりません。1塁アウトになっても仕方がないとして、あわよくば二人とも無事塁に到達、最悪ダブルプレーというプレーです。
「ランエンドヒット」は走者のスタートに合わせてヒットを狙うという作戦です。ちなみに「エンドヒット」と言う言葉は聞いたことがありません。
どちらもヒットすることに失敗、なおかつ進塁に成功したら「盗塁(スチール)」が記録されます。

ワンバウンドホームラン? そんなのあり?
打球がスタンドを越えるとホームランになり、打者はダイアモンドを一周できますね。ところが、スタンドに入る前にフィールドでワンバウンドしたら、これってホームランになるのでしょうか……?

答えはなりません。ホームランは、打球があくまでフィールドに一度も触れることなくスタンドに入らなければならないのです。では、上のような場合、スタンドに入ったボールはどうすることもできませんが、一体どういう扱いになるのでしょうか?

この場合「エンタイトルツーベース」が宣言されます。entitle(d)許諾されたtwo-base二塁打で、事実上二塁打になるということです。(尚、この言葉は和製英語で、英語では「ground-rule double(ground-rule=球場によって決められたルール、double=二塁打)」と言うそうです。メジャーでは球場によって決められたローカル・ルールらしいのです。和製英語にしては持って回った言い方だと思うのはわたしだけ?)たとえ足の早い選手で本来なら3塁打になっていたかもしれなくても、たとえ外野手が強肩の持ち主で2塁を踏ませなかったかもしれなくても、2塁打は2塁打なのです。

宿題
ボールカウント2-3に注目しましょう。TV観戦では走者の動きまで確認できませんが、スタジアム観戦なら見えますね。
また、ベンチのサインもカウントによって変わることがあります。奥が深いですね、野球って。